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東京地方裁判所 平成11年(行ウ)17号 判決 1999年8月27日

主文

一  原告の請求を棄却する。

二  訴訟費用は原告の負担とする。

事実及び理由

第一  請求

群馬県知事が平成八年九月五日に都市計画法五九条一項に基づいてした前橋都市計画道路事業三・四・二六号県庁群大線の認可の取消しを求める原告の審査請求について、被告が平成一〇年一一月二四日付けでした右審査請求を却下する旨の裁決を取り消す。

第二  事案の概要

本件は、県知事が都市計画法五九条一項に基づいてした都市計画事業の認可について、原告がその取消しを求めて審査請求をしたところ、被告が、審査請求期間の徒過を理由として、右審査請求を却下する旨の裁決をしたため、原告が右却下裁決の取消しを求めている事案である。

一  争いがない事実

1  群馬県知事は、平成八年九月五日、都市計画法五九条一項に基づいて前橋都市計画道路事業三・四・二六号県庁群大線を認可し(以下「本件認可」という。)、同月一三日、同法六二条一項に基づいて本件認可の告示を行った。

2  原告は、同年一二月二日、被告に対し、本件認可の取消しを求める審査請求(以下「本件審査請求」という。)をした。

3  これに対し、被告は、平成一〇年一一月二四日、本件審査請求は処分があったことを知った日の翌日から起算して六〇日の期間を徒過してされたものであるから、行政不服審査法一四条一項所定の期間経過後になされた不適法な請求であるとして、本件審査請求を却下する旨の裁決(以下「本件裁決」という。)をした。

二  当事者双方の主張

(被告の主張)

都市計画法五九条一項に基づく都市計画事業の認可は、その性質上、利害関係を有する者全員につき画一的に効力を生じさせることが不可欠であるところ、通常、広範囲の土地をその対象とするために利害関係人は多数にのぼり、その利害の態様も様々である上、権利の移動が頻繁に行われることが予想される。そのため、都道府県知事において、ある時点における利害関係人全員の住所、氏名等を網羅的に確知することは到底不可能であることから、右認可処分の効力は告示によって生ずることとされている。

このように、法が告示等の公示手段により利害関係人に対する周知を行うことを予定している処分については、行政不服審査法一四条一項本文にいう「処分があったことを知った日」は、利害関係人が現実に知ったか否かにかかわりなく、当該告示等の公示手段が行われた日を指すものと解すべきである。

したがって、本件の場合も、本件認可についての審査請求期間は、本件認可についての都市計画法六二条一項所定の告示がされた日の翌日である平成八年九月一四日を起算日とすべきであるから、右起算日から六〇日を経過した後にされた本件審査請求は、行政不服審査法一四条一項所定の期間経過後にされた不適法な請求であり、これを却下した本件裁決に違法はない。

(原告の主張)

行政不服審査法一四条一項本文にいう「処分があったことを知った日」とは、その文言どおりに国民である処分の対象者が当該処分を現実に「知った日」と解すべきある。

原告が本件認可を知った日は、地元説明会が行われた平成八年一〇月二日であり、本件審査請求は、その翌日から起算して六O日以内になされた適法な請求である。

したがって、実質的な判断を行わないまま本件請求を却下した本件裁決は違法である。

三  争点

本件の争点は、都市計画法五九条一項に基づく都市計画事業の認可の不服申立てにつき、行政不服審査法一四条一項本文にいう「処分があったことを知った日」とは、利害関係人が右認可がされたことを現実に知った日をいうのか、それとも、都市計画法六二条一項に基づいて右認可の告示がされた日をいうのか、の点にある。

第三  争点に対する判断

一  都市計画法五九条一項に基づく都市計画事業の認可がされると、認可をした都道府県知事は、遅滞なく、建設省令(同法施行規則四八条)で定めるところにより、施行者の名称、都市計画事業の種類、事業施行期間及び事業地を告示するものとされている(同法六二条一項)。

そして、右告示後は、当該事業地内において都市計画事業の施行の障害となるおそれがある土地の形質の変更、建築物の建築その他工作物の建設等については都道府県知事の許可を要することとなる(同法六五条一項)。

また、都市計画事業については、土地収用法二〇条の規定による事業認定は行わず、都市計画事業の認可をもって、これに代えるとともに、右認可の告示をもって、同法二六条一項の事業認定の告示とみなされる(都市計画法七〇条一項)ことから、右認可の告示後は、施行者が土地収用法による収用手続を進めることにより、土地を収用することができることとなり、また、告示の時をもって、土地収用法における関係人の範囲が確定され(都市計画法七一条一項、土地収用法八条三項)、買収価格が固定される(都市計画法七一条一項、土地収用法七一条)等の効果が発生する。

そして、都市計画法には、都市計画事業の認可につき、告示以外に利害関係人に対して個別に通知がなされるべきことを定めた規定はないが、都市計画事業の認可の告示があったときは、施行者は、すみやかに、都市計画事業の施行について周知のため必要な措置を講じるべきものとされており(都市計画法六六条)、具体的には、事業施行を公告して(同法施行規則五二条)、その旨を掲示し(同法施行令四二条二項、同法施行規則五八条)、土地建物等の有償譲渡についての制限の内容を事業地内又はその周辺の適当な場所に掲示するとともに、土地建物等の所有者に対して通知し、又は新聞紙に広告し(同法施行規則五三条、三八条の三第一項)、事業地及びその附近地の住民に対し、事業の概要についての説明会を開催すべきもの(同法施行規則五四条)とされている。

二  ところで、都市計画事業の認可は、その性質上、利害関係人全員に対し画一的かつ同時に認可の効力を生じさせることが不可欠であるところ、右認可は事業地内という通常広範囲にわたる土地を対象とするために利害関係人が多数にのぼり、その利害の態様も様々で、権利の変動が頻繁に行われることも予想され、仮に都道府県知事において、利害関係人全員の住所、氏名を把握して、各別に通知を行うという方法によるとすれば、画一的かつ同時に認可の効力を発生させることは事実上困難となり、当該事業の目的の達成は期し難いことから、都市計画法は、告示という方法によって右認可の効力を生じさせることとし、さらに、関係者、一般市民に対する周知の徹底という観点から、施行者に対し、前記のとおり告示後の周知義務を課したものと解される。

そこで、右のとおり、都市計画法においては、都市計画事業の認可の効力は、利害関係人に対する個別の通知によって発生するものとはされておらず、告示によって画一的に発生することが予定されていることからすると、行政不服審査法一四条一項本文にいう「処分があったことを知った日」とは、右告示の性質上、利害関係人が現実に右告示を知ったか否かにかかわりなく、告示が適法になされた日であると解するのが相当である。

三  したがって、本件においては、本件認可に対する審査請求期間の起算日は、本件認可の告示が適法になされた日の翌日である平成八年九月一四日と解すべきであるから、同日から六〇日を経過した後である同年一二月二日にされた本件審査請求は行政不服審査法一四条一項の規定に反した不適法な請求であるというべきである。

四  以上のとおり、本件審査請求を却下した本件裁決には違法はないから、原告の請求は理由がない。

よって、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 市村陽典 裁判官 阪本勝 裁判官 村松秀樹)

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